2015年5月17日日曜日

復活したバレンシア -彼らの成功はどのようにして起こったのか-

当ブログ3回目の記事は、私が長年追い続けてきているバレンシアのことについての記事となります。

ご存知の方もいると思いますが、私がサッカーを見るきっかけとなったのがバレンシアです。
14/15シーズンからバレンシアは経済的でもスポーツ面でも成功を収めています。
長年財政面で不安を残し、自転車操業でギリギリこらえてきたクラブが、現在の安定と過去の栄光を取り戻しつつあるのか。

最近リーガを見始めた方、バレンシアを見始めた方。
もしくは、興味を持ち始めた方に向けた、バレンシアの過去と現在の記事となっています。
少々長めの記事となりますが、読んでいただければ幸いです。



まず今シーズンの成功に入る前に、これまでのバレンシアを取り巻いていた状況をおさらいします。

バレンシアは長年、巨額の借金に苛まれていました。
その理由として主に

・無計画かつ効果的ではない補強
・スペインを取り巻く不況
・ソレール元会長による詐欺行為

の3つがあげられます。

最初に 無計画かつ効果的ではない補強 について見て行きましょう。

バレンシアは借金がありながらも結果を残していると持て囃されたこともありますが、実は補強に関しては失敗していることも多かったのはあまり知られていない印象です。


こちらの表は、獲得時に費用がかかり、かつ07/08~13/14シーズンの間に退団した選手のうち、収支に損失が出た選手です。
その数なんと24選手。
もちろん、この中にはこれまでの活躍を考慮して、退団時の移籍金を求めない例もあります。
ジョナスやジョアン・ペレイラ、モリエンテスがその例です。
しかし一方で、赤字で示した選手のように、在籍中に目立つような活躍をほとんど残せず、不良債権と化してしまった選手も多数存在しています。
特に成績的にも低迷した07/08、13/14シーズンの補強の失敗が目立ちます。
1800万€という巨額の獲得費用を投じながら、全く戦力にならなかったマヌエル・フェルナンデスやバネガ(彼はエメリ政権時代には活躍したが)は、2人で3600万€を獲得費用に当てながら、回収できたのは僅か450万€。
ベティス時代に旋風を巻き起こしたホアキンも、バレンシアでのラストシーズンを除けば2500万€という値段は全くの期待外れであったとも言えます。
(なお、この2500万€という移籍金は、獲得費用が特殊なロドリゴを除くと現在もクラブ最高タイ)

13/14はこちらの表にある選手以外にも移籍金のかからないフリー移籍でも数選手を獲得していますが、14/15現在も戦力としてカウントされているのはハビ・フエゴとヴェゾのみという状況です。

では逆に利益をあげることになった選手を見てみましょう。


損失の時と違い、その数たったの10名。
しかもそのほとんどがクラブにとって必要不可欠な選手であったことを考えると、当時のクラブの厳しい状況が伺えてきます。

もっとも、わずか10名の放出で24名分の損失のほとんどをカバーできているのは優秀とは言えますが・・・

しかし、獲得する選手の大半が思うような結果を残せず、活躍した選手はすぐさまクラブの赤字補填のために売却されるという状況にあって、選手の移籍による収支がマイナスというのは、当時のクラブ財政にとっては大きな痛手でした。


次に スペインの不況とソレール元会長の詐欺行為 についてです。

スペインは近年、大不況に見舞われています。(この話については省略)
もちろんサッカー界も例外ではなく、バルセロナとレアル・マドリーを除く全てのクラブはこの不況の影響を受けている状況です。
バルセロナとレアル・マドリーも不況の煽りは受けているのでしょうが、収入も多いので別のお話。

さて、そんな大不況の中、徐々に悪化するクラブ財政にとどめを刺したのがファン・ソレール元会長の悪行です。

彼は2004年10月にバレンシアの会長に就任しましたが、前会長のハイメ・オルティ氏を追い出しての就任劇でした。
その後、2007年にバレンシアの独裁を宣言すると、新スタジアムの建設をスタートさせます。
しかし時はスペイン大不況。
建設費用は銀行からの貸し入れと、現スタジアムのメスタージャの土地売却費用で賄おうと考えていたのが大誤算。
不況で土地は売れるはずもなく、建設はストップし、銀行への莫大な借金返済だけが残ります。
2008年に会長を退く形になりますが、彼の後任となった会長はソレールの息のかかった部下であり、結果的にソレールによる傀儡政権でした。
この夏、株式が次の会長であるビセンテ・ソリアーノ氏のものになり、クラブとは手が切れるのですが、同シーズンからメインスポンサーを務めるValencia Experienceが新たな問題となります。

08/09シーズンのメインスポンサーであったValencia Experienceですが、その存在を知る人がいなかったのです。
それもそのはず、実はこの会社、ソレール元会長が作り上げた実態のない幽霊会社です。
ソレール元会長はこの幽霊会社を利用し、クラブの負債をごまかすことを思いついたのですが、結局社員に給料を一度も払わず、それに異を唱えた社員を解雇するなどし、クラブ、社員両方から訴えられる結果となりました。

結果的に、ソレール氏が会長に就任した時にあったクラブの負債2億5000万€は、彼の退任時に7億500万€まで膨れ上がり、このValencia Experience問題で更に増加。
前年のクーマン政権下による成績不振も重なり、クラブの財政はもはや立て直せないところまで落ちる結果となりました。

クーマンの話についてはとりあえず
 ・バレンシアの歴史上、最低の結果(就任期間中)
 ・理由もなくクラブのレジェンド3人(アルベルダ、カニサレス、アングロ)を戦力外扱い
 ・給料だけ貰ってあとはやる気なく適当にやるだけ(終盤はもはや練習すらせず、違約金だけ貰う)
 ・自身が何もしないのにメディアに出ては悪口ばかり言う(ホアキン30€発言など。現在も)
 ・解任後、クラブから支給されていた車を持ち逃げ(後日、クラブ側の追求でしぶしぶ返却)
といった点をおさえておけばいいです。
正直、ここについては語りたくもないので、もっと知りたければこちらを見てください。

余談ですが、ソレール元会長、2014年4月にソリアーノ氏を誘拐、殺し屋を雇って殺害しようと計画した罪で逮捕されています。結局何がしたかったんだこいつは。



さて、ここまではクラブの負の部分についてでしたが、ここから内容は一転、今シーズンの成功の要因となった買収問題についての内容です。

新年も目前に迫った2013年の12月末、突如としてシンガポールの大富豪であるピーター・リムがクラブの買収を検討しているという情報が出ました。
リム氏は熱心なスポーツ好き、サッカー好きとして知られており、F1界でも顔が利くほか、世界一の代理人であるジョルジュ・メンデス氏との交友も深く、かつてリヴァプールの買収にも名乗りでた人物です。
数年間かけて徐々に借金を返済していたバレンシアですが、12/13、13/14シーズンは成績不振により返済額も少なくなっていたところでの買収話でした。
当時のバレンシアは負債が3億100万€合ったとされていますが、彼の出してきたオファーは2億5000万€のキャッシュ払いによる負債の解消とバレンシアの購入という、にわかには信じられないものでした。
この話以降、複数の企業や投資家がバレンシア買収に名乗りをあげることになりました。
有名所では、先日アトレティコの株式を購入したWandaグループや、ハゲタカファンドことサーベラスなど、7つの企業・投資家がオファーをしてきたとされています。

結果としてはこの買収問題は、最初に話が出てから半年後の5月18日にピーター・リム氏の所有する会社であるMeriton Holdings Limitedに売却することで決定しました。
この買収により

 ・VCF財団の負債の全額返済と1億€の融資
 ・クラブへの1億€の融資
 ・リファイナンス...2億2000万€
 ・クラブ100周年となる2019年までに、現メスタージャの土地売却と新メスタージャの建設完了
 ・選手獲得費用...6500万€ (1年目)
 ・全ての権利や公約への保証

などがリム氏からバレンシアに対して約束されることになりました。
ソレール時代に多くの負債を抱えたバレンシアですが、これまで返済してきた負債の残りのほとんどが解消されることになりました。
また、ネックであった新スタジアム問題についても、先日アトレティコの株式を購入したWandaグループが土地の購入を検討しているとも言われており、建設も再開が決定されています。
また、スペインでの買収というとマラガやラシン・サンタンデールのような失敗例があるため、デリケートな話になりますが、そちらも保証を取り付けることにより信頼関係を築いているとも言われます。
こちらについてはリム氏や、クラブの取締役会長レイ・ホーン女史が頻繁に試合に訪れていることや、執行会長であり先代会長のアマデオ・サルボ氏との関係も良好であることから心配は不要でしょう。
結果的に、破綻寸前であったクラブは、1人の大富豪の熱意と誠意により、僅か半年で救われることになりました。



それではここからは、新生バレンシアの移籍市場での動きと、現在のチームの内容について見ていきます。

買収により金銭面での不安を解消したバレンシアでしたが、クラブ生え抜きのフアン・ベルナトが自身のキャリアにおけるステップアップを選択し、1000万€という移籍金を残してバイエルンへ移籍するという幸先の悪いスタートとなりました。

しかしながら、これまで不良債権と化していた選手の大量放出を行い、代わりに有力な選手を連れてくることに成功しました。


こちらの表の選手が14/15新加入選手。
冬に獲得したエンソ・ペレスは純粋な獲得としてはクラブレコードタイとなる2500万€
更に、ネグレドの買取OP(2700万€)を行使した場合、クラブ史上最高額となります。
アンドレ・ゴメスとロドリゴ・モレノに関しては、リム氏が所有するMeriton Holdings Limitedが選手の保有権を購入し、バレンシアへレンタルさせた後、クラブの買収が正式に決定した段階で完全移籍となったため、クラブが実際に払った金額はありません。(名目上は1500万€、3000万€の買取OP行使)
現在、レンタル組が活躍しているとは言いがたいですが、移籍金を支払って獲得した選手は戦力として非常に重要な役割を果たしており、近年のバレンシアの補強としては成功の部類に入ります。

この移籍市場での動きにはリム氏の友人であるジョルジュ・メンデスの影響が強く出ており、獲得した選手の他、来シーズン獲得の候補にあがっている選手のほとんどがジョルジュ・メンデス物件となっています。



長くなりましたが、いよいよ今シーズンのバレンシアの内容について触れていきましょう。

今シーズンのバレンシアのシステムは以下の通り。


4-3-3のシステムを基本とした戦い方をしています。
今シーズンから就任したヌーノ・エスピリト・サント監督は守備の構築と攻守の切り替えを重要視し、チームのパフォーマンスを劇的に改善させました。

守備の面で重要になるのは、ハビ・フエゴの存在です。
加入2年目となる彼は、低迷していた昨シーズンも中盤の守備のタスクを1人でこなしていました。
今シーズンからは、パレホとアンドレ・ゴメス、オタメンディとムスタフィという中盤、最終ラインの選手を繋ぐ役割として機能しています


守備時の代表的な例。
ハビ・フエゴはバイタルエリアを相手に使わせないようなポジショニングを常に意識しています。
自身の広いカバーエリアとポジショニングを活かして複数のパターンにも対応できる状況を自身の能力とヌーノ監督による守備戦術によって構築。
画像の例は今シーズンのバレンシアによく見られる形で、サイドから攻撃されている際にこのようなポジションを取ることがあります。
サイドバックとサイドハーフが守備にあたることで、常に数的有利の状況を作り出しています。
また、中のポジショニングを常にインターセプトできる位置取りをすることで、ボールを奪った後にカウンターを仕掛けられるような仕組みになっています。
中盤のパレホ、アンドレ・ゴメスはこのカウンターの際に重要な役割を担っており、トライアングルを維持して守備の陣形を崩さず、ボールを奪った際にどちらかが必ずフリーで前線へ駆け上がる役割を持っています。
また、カウンターが失敗に終わっても、攻められていた逆サイドの選手(画像の例だとピアッティ&ガヤ)の攻め上がりのポジショニング、タイミングによりすぐさま遅攻に切り替えることができています。
オタメンディ、ムスタフィという両CBは空中戦、対人戦に抜群の強さを発揮するため、苦し紛れに揚げられたクロスはもちろん、サイドを突破されてあげられたクロスにおいても尽く弾き返すことができています。


続いては攻撃の組み立て時。
カウンターではなく、自陣から攻撃を組み立てる際、ハビ・フエゴが最終ラインに落ち、両CBがサイドに広がり、両SBが高い位置に動くことで3-4-3を形成します。
この時、前線に張る役割を与えられているパコ・アルカセル以外の全ての選手が必ず複数のパスコースを用意しているポジションを取っています。
中でも重要な役割を持っているのはパレホ。
組み立ての際、彼は相方であるアンドレ・ゴメスより若干低い位置を取り、ピッチのあらゆる場所への配球を担っている。


フィニッシュの時の代表例。
今シーズンのバレンシアはシュートシーンの際にエリア内に人数をかけます。
今回の例はサイド(ピアッティ-ガヤ)のパス交換などからのクロス、パスをするシーン。
バレンシアのサイドは高精度のクロスを供給できる選手が多く、ガヤやフェグリなどといった選手はアシスト能力が非常に高い。
またピアッティはアシストのみならず、得点能力も高く、アンドレ・ゴメスと位置を変えてエリア内に侵入する役割もこなせる。
また、バラガンについても、13/14シーズンからは基本的な能力が飛躍的に向上しており、数シーズン前のような不安定さが消えている他、クロスからもチャンスシーンを多く作り出せるようになっている。

サイドからエリア内へボールを供給する際、パコ・アルカセルと逆サイドの選手、そして中盤のパレホかアンドレ・ゴメスがこれに対応する形を取っており、中盤の片方がクロスに、もう片方は相手選手との間でボールを受けることのできる位置を取る。
主にエリア内へ走りこんでシュートに絡むのがパレホ、繋ぎや第二次攻撃に比重を置いているのがアンドレ・ゴメスという形になっており、今シーズンの得点者を見ても、パレホが12得点、パコ・アルカセルが10得点、ピアッティが7得点、フェグリが5得点、アンドレ・ゴメスが4得点と、パレホがより多くのゴールに絡んでいる結果となっている。
また、この際もハビ・フエゴはあまり攻撃に参加することはなく、ボールを奪われた際のケアをするために、引いた位置に待機していることが多い。

局所的ではありますが、3つの例から今シーズンのバレンシアの戦術を見ていきました。
今シーズンの戦い方に複雑なものはなく、堅固な守備を構築し、速い攻めと適切なポジショニングと攻め上がりで攻守にバランスのとれた戦い方をしていました。
またセットプレーからの得点も多く、ムスタフィ、オタメンディの両CBが4得点、ハビ・フエゴが3得点と、守備の中心選手である3名がセットプレー時の重要な得点源ともなっていました。
GKのジエゴ・アウヴェスはバレンシアに来て以来、初めてフルシーズンで活躍することができ、先日にはリーガで最も多くのPKをストップした選手ともなりました。
 


長くなりましたが、今シーズンのバレンシアを取り巻く状況はこれまでと大きく変化しました。
買収によって成功への道のりが確立されましたが、今回のようなクラブの負債を全て解消してくれるような例は稀有だったと思います。
結果的には財政面、スポーツ面でも大きな成功を掴みつつあります。
欧州の舞台へ参戦する来シーズンは難しいシーズンになるでしょうが、ここで新生バレンシアの真価がわかるでしょう。


最後に、ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回は新体制下での戦い方よりも、クラブの外の問題についてスポットを当てました。
もしこの記事を読んで興味が出たという方がいれば幸いです。
そうでもなかった、雑な記事だなと思った方も、ここまでお付き合いいただき有り難うございます。

更新頻度の低いブログですが、時たま更新していますので、その時はまたよろしくお願いします。
それでは次回の記事でお会いしましょう。

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